kmuto’s blog

はてな社でMackerel CREをやっています。料理と旅行といろんなIT技術

シニアエンジニア/メンターになった

あと3ヶ月するとはてな社に入って1年になるという状況だけど、今期が始まり今月からエンジニアグループのシニアエンジニアの役割を仰せつかった。もともとMackerel CREチームではテックリードとして前期の下半期は活動していたのだけど、もう1軸ポジションが加わることになる。

シニアエンジニアの役割の1つに、横軸のエンジニアグループ内でのメンター役がある。採用情報にある「キャリアプランの相談や、悩み・問題点の早期発見を目的」のほか、技術的相談とか、所属チームでどうあるべきか、その他普通に雑談も含めて、チームマネージャーとは異なるエンジニアからの視点で定期的にメンティーと話すことで、メンティーの成長を支援していく制度である、という認識(まだメンターとしてやるべきことの細かい部分の指示を受けていないのだけど、入社以来メンティーとしては受けてきた)。

hatena.co.jp

現代的な技術力や思考の柔軟性、それにこれからのポテンシャルもメンティーのほうがあるわけで、自分としてはまずは話を聞き、これまでの生き様やOSS活動といった経験から現代に使える部分を改変して問題の把握と解決提案・助言をしていくことになるかなと思っている。そういう意味では、前職でチームを円滑にするためにしていた行動と大きくは変わってはいない。

自分の実践集となっている感のある『情熱プログラマー』(オーム社)でも「14. 師匠になる(Be a Mentor)」という項目がある。書籍にあるような技術指導ではないので今回のメンターの役割とはちょっと違うけれども、

教えることによって、物事をより深く理解できる

し、

その道の専門家でないからといって逃げ腰になる必要はない。もしかしたら、君がこれまでに経験した何かが、君より経験の浅い人の役に立つことがあるかもしれない

が実践できるとよいか。

さて、メンタリングそのままの内容ではないけれども参考になるかな、と過去制作ご協力した書籍をぱらぱらと今は眺め直しているところ。

『エンジニアリングマネージャーのしごと』(オライリー・ジャパン

エンジニアリングマネージャー(EM)がテーマなのだけれども、メンティーとの関係性構築の上で参考になるところはある。

3章のフィードバック。「話す相手を個人として気遣う」「考えていることを卒直に直接伝える」「過剰な配慮/イヤミな攻撃/摩擦の回避ではなく、徹底的な本音」

4章の1on1のやり方。マネージングの話が多めなのでメンターだとこの軸からは少し引いたアレンジが必要ではある。サポートするための技術スキルが足りないときにどうするかは考えておく必要がありそう(これは上位エスカレーションでよさそうではあるが)。「沈黙は金なり(話が詰まったときに助け船を出すというくらいにすることで、本人がより掘り下げていける)」「状況報告を退屈にしない(こちらは逆に質問をして広げてみる、状況報告時間は手短かにする)」「話題アイデアとして、アーキテクチャやプロセスの深掘り、読んだ記事、フィードバック収集(ほかにもいくつかあったけどマネージメント面強め)」

5章キャリアプラン、6章評価面談 はこの先説明を聞いて実際に自分が求められる役割に応じて考えることにする。

9章にはメンタリングとコーチングの話がある。

メンティーにとっての恩恵は「新しいスキルと知識を学べる」「チームの外で誰かと身近な関係を作ることで、社内のネットワークを広げられる」「中立的な第三者としてメンターを利用できる。メンターはメンティーのパフォーマンスや報酬に責任を持つ誰かと話しません」「日々の業務から離れて、問題に対してより抽象的に取り組むためにメンターを利用できる」。当てはまるものもあれば当てはまらないものもあるかな、でもうまく恩恵を提供していきたい。

コーチングの一節。

技術的な問題解決と抽象的な問題解決の両面で、スタッフのスキル向上を手伝うには、明確に指導的にならない限り、常に相手の頭の上に思考のフキダシを浮かばせておくのが興味に沿った素晴らしい方法です。

『リーダーの作法』(オライリー・ジャパン

マネージャー論・リーダー論なのでこちらも当てはまらないものが多いが、28章「メンターを探せ」では「話すという行為が気詰まり」という筆者のメンティー経験が書かれていて興味深い。

内向的な私は、何も言わずにいるのが得意です。私には、話を引き出すためのコミュニケーションツールが豊富にあります。話題がないのではなく、話すという行為が私にとっては気詰まりなのです。一歩下がってあなたの話を聞き、その話に反応する方がはるかに簡単です。…(略)…

マーティは私に話をさせます。普段聞き役に徹している私にとっては、一仕事です。

…(略)…マーティと初めて行った360度評価後のセッションでは、苦しい沈黙が続きました。マーティが問いを投げかけ、私は問い返すのですが、彼は何も言わないのです。

その質問は、私が答えるべきものでした。

そして、マーティは待っていました。

いくらでも待ったのです。

お互いに見つめ合い、マーティが微笑むと、私はようやく質問に答えることができました。

その時間は、自分の考えを整理するために必要だったからです。マーティがどう考えているかは確かに重要ですが、私たちがそこに座っていた理由は、私の考えを掘り起こし、それを批判的に検討し、そしてやるべき仕事を見出すためでした。

新米メンターだけど、メンティーの成長を助けて自分も成長できるようやっていこう。

以下は余談。メンタリングについての記述は特になかったんだけど、『ユニコーン企業のひみつ』(オライリー・ジャパン)の9章で面白い一節があった。

私にはお気に入りの「プロジェクトマネージャー用の質問」があったので、それを彼女に尋ねてみたんだ。「ボスは誰なの?」と。

… (略)…彼女はあっけにとられつつ、こう答えた。

「ボスが誰かってどういうこと? ボスなんかいませんよ。チームが決めるんです」

「なるほど」私は言った。

「でも、マーケティングはXをやりたがってるけど、エンジニアリングはYをやるべきだと思っていたら、どっちにするかは誰が決めます?」

彼女は繰り返した。「チームが決めるんです」

「チームが決められなかったら?」

「その時はチームのリーダー達がグループとして決めることになりますね。いずれにしても、私たちマネージャーが判断するということはありません。チームが、関係者と一緒に解決するんです。ボスはいません」

このやりとりが私のスウェーデン文化との初遭遇の瞬間だった(Spotifyスウェーデンに本拠地を置く会社だ)。トップダウンの意思決定者を特別視する北米とは異なり、スウェーデンボトムアップの合意形成による意思決定をもっと大切にしている。