kmuto’s blog

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『ピアリング戦記』を読んだ

正月の読書、これはとても面白かった。

TCP/IPでスイッチやルーターでつながって、ルーターの先でISPにつながっている」といのはわかっていても、「ISP同士はどうやってつながっているんだろう?」「そういえばGoogleMicrosoftが使っているISPってどこなの?」という疑問を覚えたことはあるだろうか。

ISPのようにある程度自律的なネットワークグループはAS(Autonomous System)と呼ばれ、AS間はレイヤ2ネットワーク内でのBGPルーターどうしとして接続される。「ふーん、でもそれってただ共通のスイッチにケーブル挿すだけでしょ?」というのは物理上の話で、実際にはASどうしの接続は互いのメリットや力関係とお金、政治や国レベルまでも関わってくる。

BGPルータどうしをピアと呼び、これが接続するのでピアリング。ただし、接続の対価を一方が払う場合は、トランジットと呼ばれて区別される。距離的に近くてもASどうしの接続がなければ、隣の国なのにパケットがヨーロッパを回るといった事態になる(かつて学術ネットワークから商業ネットワークに行くのもだいぶ遠回りだった記憶がある)。

ASがデータセンターに集まってそれぞれBGPルーターを持ち込めば、構内配線で互いにピアリングできるが、これがIX(Internet eXchange)。人気のあるASが集まるIXは当然さらに多くのASを集める。さらに今はGoogleのように自身が多くのトラフィックを生み出す「ハイパージャイアンツ」と呼ばれるASが登場し、また新たな状況となっている。

本書は日本でのピアリング、トランジット、IXを巡る物語で、著者の小川あきみちさんが日本のピアリングやIXを開拓した方々に丹念にインタビューし、歴史を掘り起こしながら、現在の日本のインターネットの基盤に焦点を当てる。

ピアリングやトランジットのわかりやすい説明はもちろんだが、日本の代表的IXとして、NSPIXP、JPIX、JPNAP、BBIXの立ち上げにそれぞれ関わった方々の話は、当時の黎明期の雰囲気が感じられて最高に面白い。

tracerouteコマンドで経路のピアリングに感謝の思いをはせながら。